中央銀行の為替介入〜/個人投資家と機関投資家の取引〜/生命保険会社の年金資金の運用...

金利差による相場形成は?

「金利差」という材料は、とくに市場に材料がなくなると浮上するものといえます。

 

この金利差の論理は、「お金は金利の高いところから低いところへ流れる」というものですが、これについてはたいした根拠はないともいえます。

 

というのは、確かに預金ベースで考えれば、金利が少しでも高いところに預けた方が有利ですが、為替相場に影響を与える投機資金というのは、大半が株式や債券であって、預金で運用されているわけではないからです。

 

つまり、株式にとって金利上昇というのは、基本的にはネガティブ要因であり、金利上昇は景気の抑制につながり、株価にとっては下落要因になるのです。

 

一方、債券の場合は、金利上昇がネガティブ要因になることもあれば、ポジティブ要因になることもあります。

債券の場合は?

例えば、これからインフレ懸念が浮上するという局面において金利が上昇すると、どんどん長期金利が上昇するので、債券価格は下落の一途をたどります。

 

つまり、債券相場にとってはネガティブ要因になります。このような局面で、金利上昇を材料にその通貨を買うというのは変な話になってしまいます。

 

ただし、長期金利がある程度の水準まで上昇していて、それでもなおインフレが進むために短期金利を引き上げていくという局面では、むしろインフレ抑制期待から長期金利の上昇に歯止めがかかるので、債券投資には絶好の機会となります。

 

よって、日米金利差が拡大するから、ドル買いというロジックは、わかりやすいのですが、上記のような欠点もありますので、注意が必要です。

 

◆FOMCとは?
FOMCというのは、連邦公開市場委員会のことです。アメリカの連邦準備制度の金融政策に基づく公開市場操作※の方針を決定します。

 

※マネーサプライの調節、金利や為替水準の誘導などです。

 

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中央銀行の為替介入とはどのようなもの?

通貨を安定させることは、中央銀行の役割のひとつです。

 

なので、為替相場が極端に変動して、実体経済に悪影響を与えると考えられる場合には、中央銀行は為替市場で介入を行い、市場を安定させようとします。

 

具体的な為替介入は、日本では、為替介入の権限というのは、ほぼ財務省がもっています。

 

形式上は、一応中央銀行である日本銀行にも権限はあるのですが、実際は財務省がすべてを決定すると考えてよいと思います。

 

新聞報道などでは、「日銀が介入を実施」というような表現がありますが、実際に介入を指示しているのは財務省であって、日銀はあくまでも介入を執行しているにすぎないのです。

 

ちなみに、米国も、日本と同じで、財務省が介入の方針を決定し、FRBが執行を担当しています。

 

しかしながら、ユーロ圏の場合は日本や米国とは異なり、ECB(欧州中央銀行)が決定権を握っています。

 

これは、欧州ではユーロという共通の通貨を使用していますが、財務省はそれぞれの国ごとにあるので、それらの意見を集約するのは困難だからです。

 

よって、共通の中央銀行であるECBが管轄しているのです。

 

◆FFレートとは?
FFレートというのは、日本のコール金利のことです。また、FFレートは、アメリカの代表的な短期金利、政策金利です。

FRBとは?

FRBというのは、連邦準備理事会のことで、アメリカの中央銀行のことをいいます。

 

◆米国とユーロ圏の為替介入のスタンスは?
基本的に米国は、相場のことはマーケットに任せるというスタンスを取っていますので、あまり為替介入をやりたがりません。

 

よって、米国が為替介入に動いたときというのは、市場でよほどのことが起こっていると考えてもよいのかもしれません。

 

また、ユーロ圏も、ECBが為替介入に対して消極的なので、ほとんど為替介入は行われません。

 

◆トレンドとは?
トレンドというのは、大きな相場の流れの方向、あるいは動向のことをいいます。

 

ちなみに、相場が上昇しているのであれば、「トレンドは上向き」、相場が加工しているのであれば、「トレンドは下向き」などといいます。

日本の為替介入のスタンスは?

米国やユーロ圏では為替介入には消極的ですが、日本では頻繁に為替介入が行われています。

 

日本は貿易立国であり、他の国よりも為替相場が経済に与える影響が大きいため、相場を安定させるためには為替介入をせざるを得ないという事情もあるものと考えられます。

 

日本の為替介入は、財務省のトップである財務大臣がその実施を決定しますが、実際には、財務省のトップである財務官とその下の人たちが決めているとされています。

 

また、基本的に財務省はドル円の動向に注視しているので、為替介入もほとんどがドル円で行われます。

 

ただし、最近は、ユーロ円の動きがドル円相場に大きく影響を及ぼしていると考えられるときには、ユーロ円での為替介入もあるようです。

 

◆日本の為替介入のプロセスは?
日本の財務省・日銀が為替介入を実施する際には「外為特別勘定」という勘定を使います。この特別会計で政府保証債(FB)を発行し、それを実質、日本銀行が引き受ける形になります。

 

わかりやすく言うと、日本銀行がお金を刷って、そのお金で政府から政府保証債を買い、政府は、政府保証債の発行と引き換えに、日銀から受け取ったお金を使って為替介入を実施するという仕組みになっています。

 

政府保証債の発行限度枠は、毎年国会で決められるので、理論的には介入金額には限度があることになります。

 

しかしながら、実際には、発行限度額を超えそうになったときには、補正予算などで増枠することができますので、上限があるからといって、為替介入が実施できなくなるという心配はありません。

 

◆日本の為替介入は?
日本の為替介入には、円売り介入と円買い介入とがあります。円高に進んでいるときには円売り介入、円安に進んでいるときには円買い介入が実施されます。

 

◆円売り介入の場合は?
円売りの為替介入の場合は、各銀行を通じて円を市場で売って、ドルやユーロを買います。まず、政府保証債を発行して円を調達し、それを市場で売って外貨を購入します。

 

そして、購入したドルやユーロは、そのまま外貨準備という形で残され、銀行に預金したり、米国債を購入したりして運用されます。

 

◆円買い介入の場合は?
円売りの為替介入の場合は、手持ちの外貨を市場で売って、円を市場から買います。

 

なので、手持ちの外貨がなくなってしまった場合には、それ以上の介入ができなくなってしまいます。つまり、為替介入が可能な金額は、外貨準備の金額以内となるということです。

 

それを超える場合には、外国の中央銀行からドルやユーロを借りてくることなども可能ですが、それでも限界はあります。

 

そういった意味では、日本の当局(財務省)にとっては、円安よりも円高の方が怖いということがいえます。

 

円高の場合には、いくらでも円売り介入ができますが、円買い介入については、外貨準備の範囲内という限界があるからです。

 

よって、将来日本がインフレになって、想定外の円安に加速したりすると、日本は非常に危険な状態に陥る可能性もあります。

 

とはいえ、日本には、年間十数兆円規模の貿易黒字があり、構造的に円高になりやすい体質といえますので、あまり心配する必要はないのかもしれません。

 

◆日本が円高になりやすいとは?
日本には、年間十数兆円規模の貿易黒字があります。これは、毎年毎年貿易で、十数兆円の円買いが市場に出てくるということです。

 

つまり、単純に考えれば、これを上回るほどの円売りの金額が出てこない限り、円高が進んでしまうということになります。

 

このように、円というのは、構造的に円高になりやすい体質なのです。

 

よって、民間から十分な円売りが出ないときは、政府がその分、円売り介入を行わないと相場が安定しない可能性が高くなってしまうのです。

 

ちなみに、過去の介入を見ても、円売り介入の方が圧倒的に多くなっています。

 

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日本の円安局面とは?

日本の過去の円安局面には、すべて巨大な投機資金が動いているという共通点があります。例えば、バブル経済がはじける直前の1990年、1ドル=160円になったときです。

 

この時期、日本の投資家は、国内の株や不動産、ゴルフ会員権などを買い漁り、その次には海外に投資先を求めました。

 

これによって、日本から海外に投機資金が流出し、急激に円安に進んだのです。しかしながら、その後、バブルが崩壊し、今度は一気に円高へと向かいました。

 

また、1998年には、日本の低金利が長期にわたるであろうということに注目した欧米のヘッジファンドが為替市場で円売りの投機を仕掛けたときです。

 

このときは、ドル円は1ドル=150円付近まで円安になりました。

 

そして、この年、ロシア危機が起こり、その流れの中、10月の初めには、たった2日で20円も円高に進むという記録的な出来事が起こりました。

 

このときの相場は、それまで投機がつくり上げた相場が一気に崩壊した瞬間であったといわれています。

為替介入って効果はあるの?

相場は行き過ぎるものであると言われますが、これを英語でオーバーシュートといいます。

 

マーケットがどちらかに大きく動いている状況下では、そのエネルギーを吸収するのはかなり難しいです。

 

というのは、マーケットがひとつの方向に動き始めると、「売りが売りを呼ぶ」あるいは「買いが買いを呼ぶ」といわれるように、本来は取引に参加するはずではなかった人たちをも巻き込んでいくからです。

 

このように市場の動きが一方向にどんどん進んでいくときには、マーケットの勢いが強すぎるので、どんなに為替介入を実施しても、なかなか効果が上がらないという場合があります。

 

こうなると、当局(財務省)は介入の続行をせざるを得ませんが、市場に勢いがあるうちは、どんなに介入してもその効果はなかなか見えてきません。

 

しかしながら、為替相場というのは需給で動きますので、市場の需給を曲げるくらいの金額で介入を継続していけば、いつかは効き目は現れます。

 

当初は、市場もパニック状態に陥っていますので、投機資金などが一気になだれ込みますが、それを何度も食い止めているうちに、介入の合計金額が次第に膨れ上がってきて、需給そのものが歪んでくるからです。

 

そして、その後しばらくすると相場はもみ合い状態となり、膠着状態が続いた後、何かのきっかけで反転を始めます。こうした流れが、過去においては典型的なパターンとなっています。

 

なお、そのときの市場環境によっても変わってきますが、為替介入を実施してから、市場に効果が現れるまでの期間としては、数か月経過してから反転というのが一般的です。

個人投資家の取引とは?

証券投資を担う人というのは、機関投資家と個人投資家とに分けられます。

 

このうち、個人投資家の取引は、一般的に一回あたりの取引金額が比較的小さいので、短期的には、それほどマーケットに影響を及ぼさないといえます。

 

ただし、例えば日本の場合には、個人金融資産がおよそ1,400兆円もあるといわれていますので、そのうちの1%でも一度に動くと、14兆もの金額が動くことになりますので、その影響は無視できません。

 

よって、銀行の外貨預金の残高や、外貨建て投資信託の残高推移などを見て、個人投資家の動きも注視する必要はあります。

 

◆機関投資家の取引とは?
機関投資家というのは、人から預ったお金や企業のお金を運用するプロの集団のことをいいます。

 

日本の機関投資家のなかでも代表的なのが、生命保険会社ですが、1980年代後半から1990年前半には「ザ・セイホ」として恐れられていました。

 

生命保険会社は、保険料だけでなく年金資金なども預り、そのお金を運用しているのですが、円で預っていますので、基本的には国内での運用となり、一部が海外での運用となります。

 

また、その一部は、外国株式や外債で運用しているのですが、円からこれらの外貨建て資産を購入する際に、為替取引が発生することになります。

 

◆ファンダメンタルズ分析とは?
ファンダメンタルズ分析というのは、価格形成を左右する要因のなかで、基礎的な要因となるものを分析する手法のことをいいます。

「ザ・セイホ」とは?

「ザ・セイホ」というのは、代表的な日本の機関投資家のことです。

 

この「ザ・セイホ」が恐れられていた1980年代後半から1990年前半には、かなり派手な取引で市場の注目を集めていました。

 

具体的には、外国株式や外国債券に投資すると同時に、それらの為替リスクをヘッジするとの名目で、為替の売買を繰り返していました。

 

つまり、機動的にヘッジをしたり、はずしたりすることによって、為替取引でも儲けようとしていたのです。

 

また、一度の数百億円から千億円の金額で売買を繰り返していたので、当時の為替相場には大きな影響を与えていました。

 

最近の「ザ・セイホ」ですが、「ザ・セイホ」は、バブルの崩壊とともに次第に慎重な取引となり、最近では、軽妙な運用に変わっています。

 

保険料などの運用については、外国の債券に投資するケースも、その大部分はフルヘッジ付きで買い付け、償還や売却するまでは、ほぼヘッジをはずさないで運用を継続させるので、ほとんど為替相場に影響を与えなくなってきているのです。

 

ただし、ここ最近は、ヘッジなしのオープンの投資を、徐々に再開させている動きもあるようです。

生命保険会社の年金資金の運用は?

生命保険会社の年金資金の運用というのは、保険料の運用とは異なります。

 

民間の年金基金などは、その資金の運用を生命保険会社や、信託銀行、投資顧問会社などに委託しています。

 

そして、年金基金は、基本的に為替リスクをヘッジしないで運用するので、どの運用機関に委託しても為替ヘッジを求めることはありません。

 

なので、生命保険会社なども、年金の運用に際しては、ポートフォリオに組み入れる外国株式や外国債券の金額分だけ、為替取引が発生することになります。

 

よって、バブルのピーク期のように派手な取引はしませんが、年度末に向けての利食い売りや、年度始めの新規投資などを行う際に、集中的に為替取引が発生することになり、それが為替相場を大きく動かす要因となることがありますので、注意が必要になります。

 

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