貿易取引と市場参加者の反応〜/テクニカル分析とダウ理論...

貿易取引はドル売り/円買い

外国為替取引を伴う経済活動として「貿易取引」があります。

 

日本は資源に乏しいことから、原材料を輸入し、自動車や電化製品など加工製品を海外で販売する輸出を中心に経済発展を遂げてきました。

 

このとき、例えば、トヨタはアメリカで自動車を販売すると代金を米ドルで受け取り、その米ドルを円に交換するので、ドル売り/円買いを恒常的に行っているといえます。

 

なお、貿易取引と並び活発に行われている外国為替取引を伴う経済活動に「資本取引」があり、海外の金融資産(株式・債券など)や不動産への投資、最近ですとM&A(企業の合併・買収)に伴う資本取引も多くなっています。

実需原則の撤廃について

かつて日本国内で行うことのできる外国為替取引は、海外旅行や貿易取引、資本取引など実需(実際の需要)を伴うものに限定されていました。

 

しかしながら、1984年に実需原則が撤廃されたことから、為替レートの変動を利用した実需を伴わない投機・投資目的の外国為替取引が活発になっています。

 

◆ニュースが投機筋や投資家を動かす
外国為替市場全体で見ますと、実需を伴わない投機・投資目的の取引というのは、実に90%以上を占めているといわれています。

 

つまり、為替相場を動かしているのは、投機筋や投資家の動向であるといえるのです。そして、投機筋や投資家を動かすのが「ニュース」なのです。

 

貿易取引・資本取引のほかにも、各国の政治や経済政策、経済指標、あるいはそれらに関する予想や要人発言などがニュースで報じられると、外国為替市場はその都度反応して為替レートも変動します。

 

◆同じニュースでも時代や時期により変わる
たとえ同じニュースであっても、市場参加者のその捉え方は、時代や時期によっても変わります。

 

例えば、1990年代前半には、アメリカの貿易赤字と日本の貿易黒字が続く限り、ドル安/円高が続くといわれていました。

 

なので、この頃は、両国の貿易統計が発表された直後の数分間にドル円相場が大きく変動するということがよくありました。

 

しかしながら、現在では多少その名残はあるかもしれませんが、かつてほどの熱狂ぶりは見られません。

 

◆ニュースに対する市場参加者の反応が重要
外国為替市場を動かしているのはニュースであることから、市場動向を予測するためには、ニュースに対して市場参加者がどのように反応するのかを見極める能力が必要になります。

 

これが外国為替市場は、「美人投票の原則」に則っているといわれる理由です。

 

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美人投票の原則とはどのようなものですか?

美人投票の原則というのは、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズ氏が提唱した原則であり、株式市場動向を当時のイギリス市民であれば誰でも理解できる「新聞紙上美人コンテスト」でたとえたものです。

 

具体的には、そのコンテストは、100名の女性候補から「この人が一番美人だ」と思う人に投票し、美人ナンバーワンに選抜された女性を見事に当てた人が多額の賞金を獲得するというものでした。

 

つまり、このコンテストにおいては、自分が美人だと思う人を当てるのではなく、投票に参加する人が誰を美人だと思うのかを当てなければならないというものだったのです。

 

◆美人投票の原則は株式市場・外国為替市場にも
ケインズ氏は、この仕組みは株式市場動向にも当てはまると提唱しました。

 

すなわち、市場動向を予測するには、自分が株式市場についてどのように思うのかということよりも、むしろ株式市場に参加する人が株式市場動向をどのように思うのかを考えなければならないと説いたのです。

 

そして、この美人投票の原則は、外国為替市場にも当てはまります。

 

つまり、例えば、アメリカの貿易赤字の拡大が報じられた場合には、そのニュースについて自分自身がどのように思うのかということよりも、外国為替市場参加者がそのニュースに対してどのような反応を示すのかということを見極めることが大切だということです。

 

◆プライマリー・セカンダリー・マイナーについて
まず市場価格推移には、1年超から数年という長期に渡るプライマリー・トレンド(primary trend)が存在します。

 

このプライマリー・トレンドを数ヶ月から1年に渡り中期的に推進したり、プライマリー・トレンドから時には乖離することもあるのが、セカンダリー・トレンド(secoundary trend)です。

 

その中期的な乖離は、コレクション(correction:修正)によって元のプライマリー・トレンドに戻ります。

 

そして、数日から数週間の変動によって短期的に形成されるマイナー・トレンド(minor trend)があります。

テクニカル分析はどのようことを前提としているのですか?

テクニカル分析というのは、価格や取引高、建玉などの推移をチャートに表し、相場の過去の値動きから将来の価格の方向性を予測しようとするものです。

 

また、テクニカル分析では、次の3つの事項を前提としています。

 

■マーケットの動きはすべて織り込む
・過去の動きだけでなく、近い将来に発表されるファンダメンタルズ(経済諸要因)予測に、市場参加者が好感を示すと市場価格は上昇します。
・反対の場合も同様です。
・つまり、テクニカル分析においては、市場価格は経済ファンダメンタルズを織り込んで形成されるものであるから、市場価格の動きに注意することが経済ファンダメンタルズを先取りすることになると考えるのです。

 

■価格の動きはトレンドを形成する
・市場価格は直線的に動くのではなく上下しながら動きますが、その山と谷を形成する方向がトレンドになります。
・テクニカル分析では、このトレンドの把握とトレンドの転換点を見極めることに専念しています。

 

■歴史は繰り返す
・テクニカル分析では、過去の市場価格動向を分析し、将来的にも似たようなパターンが形成されると考えていますので、そのパターンの捉え方の数だけテクニカル分析が存在します。
・そのパターンの捉え方は、市場価格動向の形状や推移に着目したトレンド系と、市場価格動向のスピードに着目したオシレーター系の2つに分けることができます。

 

◆テクニカル分析の基本前提とダウ理論にはどのような関係にありますか?
テクニカル分析の基本前提は、次の3つです。

 

■マーケットの動きはすべて織り込む
■価格の動きはトレンドを形成する
■歴史は繰り返す

 

そして、これらテクニカル分析の3つの基本前提は、ダウ理論(Dow theory)の次のような考え方によっています。

 

■平均はすべての事象を織り込む。
■トレンドには3種類ある。
・プライマリー(長期)
・セカンダリー(中期)
・マイナー(短期)
■主要トレンドは3段階からなる。
■平均は相互に確認されなければならない。
■トレンドは出来高でも確認されなければならない。
■トレンドは転換の明白なシグナルが出るまでは継続する。

 

つまり、これらの考え方が集約されて、テクニカル分析の3つの基本前提ができたということです。テクニカル分析の元祖はダウ理論であるといわれるのはこのためです。

ダウ理論にはどのような批判があるのですか?

アメリカの大学で用いられているファイナンスやインベストメント関連の教科書においても、しばしば批判とともにダウ理論が紹介されています。

 

ダウ理論についての一般的な批判としては、次のようなものです。

 

■トレンドが確認できるのはトレンドが形成された後なので、トレンドを先取りすることはできない。
■誤ったシグナルを発することが多い。
■もしトレンドを事前に予測できたとしたら、市場価格は徐々に上昇するのではなく、予測レベルまで急上昇するはずである。
■長期トレンドが存在するということは、長期予測が成立していないということになるので、理論自体が自己矛盾をしてしまっている。...など

 

なお、このようなテクニカル分析の元祖であるダウ理論への批判は、ダウ理論から派生した多くのテクニカル分析にも該当します。

 

ちなみに、テクニカル分析は、効率的市場仮説の考え方からも批判の対象となっています。

 

◆ダウ理論のトレンドとは?
市場価格は直線的に動くというよりは、むしろジグザグに上下しながら動きます。

 

また、トレンドには大きく分けると、上昇・下降・横ばいの3つがあり、ダウ理論では、次のようにいわれています。

 

■マイナー ⇒ 2〜3週間
■セカンダリー ⇒ 3週間〜数か月
■プライマリー ⇒ 1年間

 

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横ばいトレンドにはどのようなものがありますか?

横ばいトレンドというのは、上昇も下降もせずにもみ合っているトレンドのことをいいます。 横ばいトレンドには、次の3つがあります。

 

■シンメトリカル・トライアングル(対称的トライアングル)
・徐々に価格変動が収束していくトライアングル

 

■アセンディング・トライアングル(上昇トライアングル)
・レジスタンス(山)は上昇していかないけれども、サポート(谷)が切り上がっていくトライアングル

 

■ディセンディング・トライアングル(下降トライアングル)
・サポート(谷)は下がっていかないがレジスタンスが下降していくトライアングル

 

ちなみに、横ばいが現れますと、その後上昇・下降いずれにも展開する可能性がありますが、支持線・抵抗線のどちらを抜けていくかが見極めのポイントとなります。

 

◆トレンドとは?
トレンドというのは、為替相場の傾向や方向性のことをいい、次の3つに分類されます。

 

■上昇トレンド ■下降トレンド
■横ばい(ボックス)トレンド

 

◆トレンドの形成とは?
ジグザグの価格推移の上の部分を「山」または「レジスタンス」、下の部分を「谷」または「サポート」と呼びます。トレンドとは、この山と谷の形成する方向のことをいいます。

 

上昇トレンドの場合には、新しいサポートとレジスタンスは前回のそれらよりも高くなければなりません。

 

逆に、下降トレンドの場合には、新しいサポートとレジスタンスは前回のそれらよりも低くなければなりません。

 

そして、テクニカル分析においては、それぞれのトレンドは、少なくとも3つ以上のサポートとレジスタンスがなくてはならないと考えます。

サポートラインとレジスタンスラインとは?

サポートライン(支持線)というのは、サポートを結んだ線のことをいい、レジスタンスライン(抵抗線)というのは、レジスタンスを結んだ線のことをいいます。

 

◆ブレイクアウトとは?
ブレイクアウトというのは、サポートラインとレジスタンスラインの範囲の外に市場価格が抜けていった場合のことをいいます。

 

このブレイクアウトは、同じ上昇(下降)トレンドの中で新しい取引価格帯の出現、あるいは新しいトレンドの始まりを示唆すると考えられています。

 

◆高値とは?
高値というのは、取引で最も高くついた値段のことをいいます。

 

◆安値とは?
安値というのは、取引で最も安くついた値段のことをいいます。

ローソク足チャートとはどのようなチャートですか?

ローソク足チャート(candle chart)とバー・チャートは、価格動向を表す代表的なチャートです。いずれのチャートも4本値(始値、高値、安値、終値)をもとに描かれています。

 

ただし、ローソク足チャートのほうは、価格が上昇して終わった(始値<終値:陽線)日と価格が下落して終わった日(始値>終値:陰線)日を色分けしますので※、バー・チャートよりも価格動向は把握しやすいと思われます。

 

※陽線を白抜き、陰線を黒塗りするケースが多いですが、青・赤などで色分けするなど色々なものが存在します。

 

◆ローソク足の実体部分の大小を見る
ローソク足の実体部分の大小によって、始値と終値の幅の大小がわかります。

 

具体的には、実体部分が大きいと、始値と終値の幅が大きかったことを表し、反対に、実体部分が小さいと、始値と終値は幅が小さかったことがわかります。

 

◆陰線とは?
陰線というのは、始値よりも終値が安かったとき、すなわち値動きが右肩下がりのローソク足のことをいいます。

 

◆陽線とは?
陽線というのは、始値よりも終値が高かったとき、すなわち値動きが右肩上がりのローソク足のことをいいます。

 

◆始値とは?
始値というのは、寄り付き(よりつき)ともいう、取引で最初についた値段のことをいいます。

 

◆終値とは?
終値というのは、引け値ともいう、取引で最後についた値段のことをいいます。

坂田五法は日本発祥のテクニカル分析

『ダウ理論』というのは、テクニカル分析の元祖と世界的に認識されていますが、それよりもおよそ250年も前に、日本においてテクニカル分析が発祥していたという説があります。

 

これについては、1730年に江戸幕府が、米の先物取引が行える大阪堂島米相場会所を開設したことに始まります。

 

米どころである山形県庄内酒田の本間宗久(1724〜1803)が「坂田五法」と呼ばれるテクニカル分析を編み出し、米相場で巨額の富を成したといわれています。

 

ちなみに、1774年には、江戸幕府に財政指南役として登用されるまでに至ったそうです。

 

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